幼稚園の話
3歳離れた姉が園服を着て動物の絵が描かれたバスで幼稚園に通う
幼稚園は好きだけどよくさぼった。
両親はもちろん仮病だとわかっていただろう、
私のさぼり癖は未就学児の時からなのかと自分でも呆れる。
私はずっと他人と距離を感じている、
見回せば大人っぽすぎる人と、子供っぽすぎる人、
とても小さかった頃の話
一番古い記憶、私は家のリビングで母に抱かれている。
故郷の話
家族の話
家族仲が良いよね。とよく言われる。
3歳離れた姉の話
6歳離れた兄の話
兄はぼんやりした人だ。少し浮世離れしている。
友人でも恋人でも誰かと寄り添う姿は想像できないし、本人もそういうクリアな輪郭を求めていないように見える。
兄が好きなものはいくつかあるけれど、その愛し方は今時ではない。
例えばゲームが好きで新しいハードが出ると必ず買う、それを象徴するようなソフトも一通り買う。ジャンルは問わない。今時の所謂オタクと呼ばれる人のようにネットで情報を収集したり、配信したり、交流したりはしない。ただ自分の興味だけを満たす。
こう書くとなんだかすごく健康的な人のような気がしてきた。なんと欲のない。清浄だ。
先日、昔私たちが遊んだソフトが配信される事になったねと言ったら、ひどく驚いて何で知ってるのか聞いてきた。twitterでみたんだよと言ったら、お前の友達にゲームに詳しい人がいるのか?と聞いてくる。ちがうよtwitterでそういうアカウントをフォローしてるから自然と情報が入るんだよと言うと、俺はファミ通でみたんだけどなぁと言う。
すごい!いまだにファミ通が情報源のゲームオタク!清浄だ!いつまでもそうあってくれ!
兄はぼんやりした人だ。
思春期、私は兄の事がたまらなく嫌になったことがある。生理的に受け付けなくて何年も口を利かなかった。何年も。私が大学に入ってしばらくしたある日、数年ぶりに話した。「ご飯だって」だかなんだか忘れたけど、大したことない言葉をかけた。今さらなんだと怒られるかなとも思ったけど、兄はなんでもない風だった。
その晩兄はコンビニの袋を私の前に置いた。中には色んな味のハーゲンダッツが入っていた。
母の話
母の話。母の話。
父ほど話すことがないように感じる。
仲が悪いのか?そんなことはない、毎年一緒に旅行をする。
存在感が薄いのか?聞かれればそんな事はない。強烈だ。
見た目が?そんなことはない。派手でも地味でもないごく普通、
とんでもない毒親なのか?そんなこともない。いや、どうだろう。
つまりはまあなんというか、一番近くて一番遠い他人だ。
見た目は中肉中背、丸顔、年の割に若くは見えるが、
口癖「人生なるようにしかならないのよ」
好きな物「北杜夫とインカ帝国」
趣味「石集め。集めた水晶やらなんやらで祭壇を作ること」
特技「サスペンスドラマの犯人を当てる」
なんだかひどくいい加減な女だ。
母親というのはどれも同じだろうかアド街ック天国で紹介された場
娘はそれほどでもないが東京で働いている娘は大好きだ。
私が母の恋愛にブルースウィルスの毛ほどの興味がないのと同じく
先日父の命日にプラネタリウムが見たいとリクエストされた。
「丁度命日だし、あの人は星が好きだったから」
本当に空気感だけで生きている女だ。
スカイツリーの眺めの良いレストランを予約して2人で昼からシャ
小さい頃からインカ帝国が好きで好きで、
私の驚きを酔っ払いの母は感じなかったようだ。
初めて母を母親としてでなく一人の人間として感じた。
ずっと合わないと思っていたけど同級生だったらもしかして、
そう思えた今年の父の命日(仮)だった。