31年

大したことはなにもない人生を振り返るためのメモ

家族の話

家族仲が良いよね。とよく言われる。

昔からよく家族総出で出掛けていたし、私達兄妹が全員実家を出た今でも姉の旦那や子供を含めて国内一回、暇な大人だけで行く海外一回はここ数年欠かさない。
私達はごく親しい人とするように笑いながら思い出話をする。私が子供の頃池という池に飛び込んだ話、父が亡くなる前に放った渾身のブラックジョーク集、姉の好き嫌いの話、いい加減な母のいい加減な料理の話。
しかし、私達はごく親しい人と当然するような心の触れ合いをしない。
私達兄妹が子供の頃どんな活躍をみせても、人生に疲れてどんなに落ち込んでいても、父が亡くなっても、私たちは決して自慢したり互いを讃えたり、心を開いて相談したり、ましてや慰めあったりしない。
私達にとって家族は一番身近な世間で、その世間様にみっともない真似をしてはいけないのだ。笑顔で挨拶をかわし近況を話し合い、昔ながらの共通の話題に花を咲かす。それ以上の事を人様に求めてはいけない。
対家族のコマンドは「談笑」しか許されていない。
そんな徹底した個人主義を今では心地よく思うけれど、子供の頃は寂しかった。
勉強がどんなに出来ても、絵がどんなに上手でも、「自分が出来ることを驕ってはいけない」と窘められた。
母は運動会でも受験でも応援しなかった。「人生なるようにしかならない」から。
ある時なぜ子供の頃褒めなかったのかと聞いたら「あなた達割と優秀だったから近所の人も先生も褒めてくれてて、私まで褒めたら失敗した時にみんなの期待で潰れちゃうんじゃないかって。失敗して『ごめんなさい』なんて言わせたくなかったの。
なるほど。なるほど…?いや、その深すぎる愛、子供には伝わらないよ??まあいいか今ではわかる気がするから。
そんな家族の関係が心地よく、またいつまでも心地悪い。
私にとって家族とは一番近い他人で、その他人を大切に思う気持ちを大事にしたい。それは世界のどこかにいる顔も知らない他人を大切に思う事と同じだから。