31年

大したことはなにもない人生を振り返るためのメモ

6歳離れた兄の話

兄はぼんやりした人だ。少し浮世離れしている。
友人でも恋人でも誰かと寄り添う姿は想像できないし、本人もそういうクリアな輪郭を求めていないように見える。
兄が好きなものはいくつかあるけれど、その愛し方は今時ではない。
例えばゲームが好きで新しいハードが出ると必ず買う、それを象徴するようなソフトも一通り買う。ジャンルは問わない。今時の所謂オタクと呼ばれる人のようにネットで情報を収集したり、配信したり、交流したりはしない。ただ自分の興味だけを満たす。
こう書くとなんだかすごく健康的な人のような気がしてきた。なんと欲のない。清浄だ。
先日、昔私たちが遊んだソフトが配信される事になったねと言ったら、ひどく驚いて何で知ってるのか聞いてきた。twitterでみたんだよと言ったら、お前の友達にゲームに詳しい人がいるのか?と聞いてくる。ちがうよtwitterでそういうアカウントをフォローしてるから自然と情報が入るんだよと言うと、俺はファミ通でみたんだけどなぁと言う。
すごい!いまだにファミ通が情報源のゲームオタク!清浄だ!いつまでもそうあってくれ!
兄はぼんやりした人だ。
思春期、私は兄の事がたまらなく嫌になったことがある。生理的に受け付けなくて何年も口を利かなかった。何年も。私が大学に入ってしばらくしたある日、数年ぶりに話した。「ご飯だって」だかなんだか忘れたけど、大したことない言葉をかけた。今さらなんだと怒られるかなとも思ったけど、兄はなんでもない風だった。
その晩兄はコンビニの袋を私の前に置いた。中には色んな味のハーゲンダッツが入っていた。